ORAL HEALTH & HEALTHY LIFE

歯と全身の健康は、深くつながっています

歯の役割は、食べ物を噛むことだけではありません。しっかり噛んで食事をすること、必要な栄養をとること、人と会話をすること、そして毎日の生活を自分らしく楽しむことにも、お口の機能は関わっています。歯を守ることは、これからの人生の質を考えることでもあります。

01
食べる

食事を細かく噛み、飲み込みやすい状態へ。

02
支える

噛み合わせやお口の機能を維持する。

03
楽しむ

食事や会話を楽しめる毎日につなげる。

健康的な食事を楽しむ夫婦のイメージ

HEALTHY LIFE EXPECTANCY

「長く生きる」だけでなく、健やかに暮らせる時間を考える

平均寿命とは、生まれてから亡くなるまでの平均的な期間を示す指標です。一方の健康寿命は、健康上の制限によって日常生活が大きく制限されることなく生活できる期間を示します。歯の本数や口腔機能だけで健康寿命が決まるわけではありませんが、高齢期の食事、栄養、身体機能、社会参加などを支える要素のひとつとして、お口の健康を維持することが重要と考えられています。

HEALTHY
健康寿命

日常生活を大きく制限されず、自立して生活できる期間

CARE PERIOD
健康上の制限がある期間

介護や医療的な支援などを必要とする場合がある期間

LIFE
平均寿命

人生全体の平均的な長さ

POINT

歯を守る目的は「本数」だけではありません

大切なのは、残っている歯や補綴物を使って、無理なく食べられること、噛み合わせが安定していること、お口を清潔に保てることです。天然歯をできるだけ残し、失った部分については放置せず、お口全体の機能を維持していくことが重要です。

MASTICATION

そしゃく機能が支えているもの

「噛む」という動作には、歯だけでなく、顎、舌、頬、唾液、神経や筋肉など多くの組織が関わっています。食べ物を適切な大きさまで細かくし、唾液と混ぜ、飲み込みやすい状態に整えるまでがそしゃくの大切な役割です。歯を失ったり噛み合わせが不安定になったりすると、食べられる食品や食事の仕方が変化することがあります。

01

食事の選択

噛みにくさがあると、硬い肉類、野菜、繊維質の食品などを避け、やわらかい食品に偏る場合があります。食事の選択肢を保つためにも、噛める状態を維持することが大切です。

02

栄養との関係

食べられる食品の種類が少なくなると、たんぱく質、ビタミン、食物繊維などの摂取にも影響する可能性があります。お口の状態だけでなく食生活全体を見ることが重要です。

03

会話・社会参加

歯や義歯の状態は、発音や見た目にも関係します。食事や会話を人と一緒に楽しめることは、高齢期の社会参加や生活の質を考えるうえでも大切な要素です。

04

お口全体の機能

歯だけでなく、舌の動き、唾液、飲み込み、口唇の力などを含めて「口腔機能」と考えます。定期的に状態を確認し、小さな変化を早期に把握することが重要です。

ORAL HEALTH & COGNITION

歯の状態と認知機能との関係

歯の本数や義歯の使用状況と、認知機能との関連を調べた研究があります。ただし、「歯が少ないことが直接認知症を起こす」という意味ではありません。食生活、全身状態、運動、社会参加、生活習慣など多くの要因が関係するため、お口の健康はその中のひとつの要素として考える必要があります。

STEP
01

ORAL CONDITION

歯の喪失・噛みにくさ

歯を失った状態や噛み合わせが不安定な状態では、食事の仕方や選ぶ食品が変わることがあります。

STEP
02

MASTICATION

そしゃく機会の変化

噛む回数や食事内容が変化すると、そしゃくによる刺激や口腔機能の使い方も変わります。

STEP
03

DAILY LIFE

栄養・身体活動・社会生活

食事や会話、外出などの生活行動は互いに関連しています。お口の状態だけを単独で考えるのではなく、生活全体を見ることが大切です。

STEP
04

COGNITIVE HEALTH

認知機能との関連

高齢者を対象とした研究では、歯の状態や義歯の使用状況と認知症発症との関連が報告されています。因果関係については慎重に考える必要があります。

EVIDENCE
研究報告の一例

65歳以上の4,425人を対象とした4年間の前向き研究では、歯が少なく義歯を使用していない人は、20歯以上ある人と比較して認知症発症との関連が認められました。一方、「噛みにくさ」そのものについては、他の要因を調整した解析では統計学的に明確な関連を示しませんでした。

Yamamoto T, et al. Psychosom Med. 2012;74(3):241-248. doi:10.1097/PSY.0b013e318246dffb

ORAL HEALTH & FALLS

歯の状態と転倒リスクとの関係

高齢者を対象とした研究では、歯の本数だけでなく、失った歯を義歯などで補っているかどうかも、転倒との関連を考えるうえで重要であることが示されています。

基準

20歯以上
REFERENCE

OR 2.50

19歯以下・義歯なし
ASSOCIATION

「歯が少ない=必ず転倒しやすい」という意味ではありません

65歳以上1,763人を対象とした前向き研究では、20歯以上ある人と比較して、19歯以下かつ義歯を使用していない人で、その後の複数回の転倒が多いという関連が示されました。

一方、19歯以下であっても義歯を使用していた人では、統計学的に有意なリスク上昇は確認されませんでした。歯を失った場合には、噛み合わせを適切に回復することも重要です。

Yamamoto T, et al. BMJ Open. 2012;2:e001262. doi:10.1136/bmjopen-2012-001262

OCCLUSION & SWALLOWING

噛み合わせと「飲み込む」機能

食事は、噛んだら終わりではありません。歯で食べ物を細かくし、舌や頬を使ってまとめ、飲み込みやすい形にしてから喉へ送ります。そのため、奥歯でしっかり噛み合う「咬合支持」は、食事を安全に進めるための口腔機能のひとつです。

OCCLUSAL SUPPORT

咬合支持が保たれている場合

01
噛む

食べ物を適切な大きさに細かくする

02
まとめる

舌や唾液を使い、飲み込みやすくする

03
飲み込む

まとまった食塊を喉へ送る

咬合支持
噛む機能と嚥下機能を考える

REDUCED SUPPORT

咬合支持が少ない場合

01
細かくしにくい

十分に噛めず、大きな状態で残ることがある

02
まとめにくい

食塊形成に時間がかかることがある

03
嚥下への影響

高齢者では嚥下機能との関連も報告されている

RESEARCH NOTE

高齢の施設入居者を対象とした研究では、奥歯の咬合支持が少ないことと嚥下障害リスクとの関連が報告されています。ただし、嚥下機能には年齢、全身疾患、筋力、認知機能など多くの要因が関係します。

Posterior teeth occlusion and dysphagia risk in older nursing home residents. J Oral Rehabil. 2017.

WHEN A TOOTH IS LOST

歯を失ったとき、「そのままにしない」こと

一本の歯を失っても、しばらくは食事ができることがあります。しかし、欠損したスペースへ隣の歯が傾いたり、噛み合っていた歯が移動したりすると、歯列や噛み合わせ全体のバランスが変化することがあります。大切なのは、失った歯だけを見るのではなく、残っている歯を含めてお口全体の機能を考えることです。

01

まず原因を確認する

むし歯、歯周病、破折など、歯を失った原因を確認し、残っている歯にも同じ問題がないか調べます。

02

噛み合わせを確認する

欠損部だけでなく、上下左右の歯の位置、咬合力のかかり方、顎関節なども確認します。

03

適切な方法で補う

ブリッジ、入れ歯、インプラントなど、それぞれの特徴を比較し、口腔状態と希望に応じた方法を検討します。

LIFELONG ORAL CARE

「治して終わり」ではなく、噛める状態を守り続ける

天然歯も、ブリッジも、入れ歯も、インプラントも、長く機能させるためには継続的な管理が必要です。むし歯や歯周病のチェックだけでなく、噛み合わせ、歯肉、清掃状態、人工歯や義歯の状態なども確認します。

01
毎日のセルフケア
02
定期的な歯科検診
03
噛み合わせの確認
04
必要に応じたメインテナンス

SUMMARY

TEETH ARE PART OF YOUR HEALTH

歯を守ることは、これからの生活を守ること

食べる、話す、笑う、人と会う。日常の何気ない行動の多くに、お口の機能が関わっています。歯を失わないことはもちろん重要ですが、歯を失った場合にも、そのままにせず、噛み合わせや残っている歯まで含めて適切に管理することが大切です。

当院では、一本の歯だけを見るのではなく、歯周組織、顎の骨、噛み合わせ、残存歯の状態まで確認しながら、お口全体を長期的に維持することを考えて治療方針をご提案します。

参考文献

1. Yamamoto T, Kondo K, Hirai H, et al. Association between self-reported dental health status and onset of dementia: a 4-year prospective cohort study of older Japanese adults from the Aichi Gerontological Evaluation Study (AGES) Project. Psychosom Med. 2012;74(3):241-248. doi:10.1097/PSY.0b013e318246dffb

2. Yamamoto T, Kondo K, Misawa J, et al. Dental status and incident falls among older Japanese: a prospective cohort study. BMJ Open. 2012;2:e001262. doi:10.1136/bmjopen-2012-001262

3. Aida J, Kondo K, Hirai H, et al. Association between dental status and incident disability in an older Japanese population. J Am Geriatr Soc. 2012;60(2):338-343. doi:10.1111/j.1532-5415.2011.03791.x

4. Posterior teeth occlusion and dysphagia risk in older nursing home residents: a cross-sectional observational study. J Oral Rehabil. 2017.

※研究結果は集団を対象とした統計的な関連を示すものであり、個々の患者様について特定の病気の発症や予防効果を保証するものではありません。